
(社会主義と共産主義の違いについて簡単にわかりやすく解説します)
この記事では、社会主義と共産主義の違いについて、簡単にわかりやすく解説します。
この2つの言葉はよく似ていますね。実際、同じ意味で使われることもあるぐらいです。
↓日本共産党などは「社会主義と共産主義を同じ意味で使う」と2004年に機関紙で明言しています。
日本共産党も今後は、「社会主義」「共産主義」の二つの用語を同じ意味で使うことにし、未来社会をきちんと表現するときには「社会主義・共産主義社会」と表現することにしています。
しかし、一般的には社会主義と共産主義とは違う意味の言葉として使うケースが多いでしょう。
具体的にどこが違うのか?について解説していきますので、参考にしてみてください。
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社会主義と共産主義の違い

(社会主義や共産主義を提唱したマルクス・エンゲルス・レーニン)
社会主義とは「共産主義の途中段階」の社会をいいます。
最終的には共産主義の社会の実現を目指すのだけれど、いきなりそこまでいくのは難しいから、とりあえずは社会主義を目指しましょう。というわけです。
(マルクスは、現状である資本主義は、社会主義を経て最終的に共産主義へと向かうと考えました)
社会主義は共産主義の途中経過ですから、社会主義と共産主義を比較すると以下の3つの点で違いがあります。
- ①消費の自由を認めるかどうか
- ②政府の有無
- ③理想とする社会の実現方法
それぞれの違いについて、順番に見ていきましょう。
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①消費の自由を認めるかどうか
消費とは、稼いだお金をそれぞれの人が自由に使うことをいいます。
- 社会主義は「分配された富をどう使うかは個人の自由」と考えますから、消費の自由が認められます。
- 一方で、共産主義では消費まで平等になるように管理されます。
具体的には、配給制のような社会をイメージになるでしょう。
社会主義では与えられた給金で好きな車を買っても許されますが、共産主義では今朝食べるパンまで「平等」にならないといけないのです。
ただ、配給制というとものすごく貧しいイメージがありますが、マルクスが本来唱えた共産主義は「資本主義が発達しきったあとに来る社会」です。
そのため、現在の日本やアメリカのように高度に発達した商品やサービスがある社会でこそ、共産主義は実現することを想定していることを知っておきましょう。
(現代の社会で、AIが完璧に生産量や消費量を管理しているようなイメージでしょうか)
②政府の有無
- 社会主義は「政府が国の財産を管理分配」しますので、必然的に政府が必要です。
- 一方で、共産主義は「真の平等化では争いは起こらないため政府は必要ない」という状況を目指しています。
むしろ、政府があると「政府と国民の間の不平等」が生まれるので、政府は邪魔ということになります。
ですが、実際の社会では政府がないと色々と不都合があって立ち行かなくなってしまうでしょう。
そのため、共産主義は理想であって、社会主義は共産主義の実現に向かう途中だと呼ばれるのです。
③理想とする社会の実現方法
社会主義は政府があるので議会制民主主義、つまり選挙で議員を選んで国政をしてもらう仕組みがあります。
そこから少しずつ改革を重ね共産主義へ近づいていこうという姿勢です。
一方、共産主義は革命によって労働者階級が資本家や政府を打ち倒すところから国家をつくることを提唱しています。
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そもそも社会主義とは?

(マルクスと彼を支援したエンゲルスの像。そもそも社会主義とはなんなのか?について整理しておきましょう)
上では社会主義と共産主義の違いについて解説しましたが、以下では「そもそも社会主義とはなんなのか?」について整理しておきましょう。
社会主義とは、おおまかにいえば「格差のある社会をやめて、すべての国民に平等に財産を分配しよう」という考え方のことです。
この社会主義は「どこからどこまで」と区切れるものではないことに注意が必要です。
「これまでは資本主義だったけど、明日からは社会主義で」ということではなく、資本主義の社会であっても、一部の政策では社会主義の考え方を取り入れることもあるという意味です。
現代の日本は資本主義の社会ですが、一部では社会主義的な政策が実施されている部分もあります。
例えば、日本の税金は「お金をたくさん持っている人ほどたくさん払う」というルールになっています(累進課税といいます)
累進課税によって、お金持ちから多く徴収したお金をもとに、貧しい人も平等に使える年金や医療の制度を運営していますから、これは一種の社会主義的な政策ということができます。
「資本主義がベースだけれど、資本主義を放置していると格差がどんどん広がっていってしまうから、社会主義によって一部を修正しよう」というのが、現在の日本が採用している考え方といえるでしょう。
社会主義は「格差のない社会」を目指す考え方
上のように見ると、社会主義はとても良い仕組みのように思えますね。
私たちが住んでいる家は、マイホームだったり賃貸アパートだったりしますが、マイホームを持つためにはお金を払わないといけませんし、賃貸アパートに住むには大家さんに家賃を払わないといけません。
大家さんは自分で働かなくても家賃収入が入ってきますから楽ちんですね。
社会主義ではこういったことは認めません。
すべての国民は平等でないといけませんから、家や土地を個人で持つことは許されないのです(すべて「国のもの」という扱いになります)
土地や家は国が全て管理し、国から国民に平等に分配されたものという扱いになります。
こうすることで貧しい人にも土地や家が行き渡り「貧困や格差がなくなって国民が平等に幸福を得られる」と考えるのです。
共産主義では「一生懸命働く人もサボる人も同じ収入」になる
しかし、この社会主義の考え方を究極にまで押し広げていくとどうなるでしょうか。
すでに見たように、社会主義が行き着く先にあるのが共産主義で、文字通り「すべての人が平等な社会」です。
世の中にはいろんな人がいますから、「一生懸命働かないと気が済まない」という人もいれば、「できれば毎日朝から晩まで寝ていたい」という人もいるでしょう。
共産主義の社会ではこのどちらの人も平等でないといけませんから、一生懸命働いた人も、一日中寝ていただけの人も、同じ金額の収入ということになります。
こうなると、一生懸命働くなんてバカバカしくて誰もやらなくなるでしょう。
実際、過去に存在したソ連という国では、一生懸命働く人も働かない人も同じ配給ということになりましたから、真面目に働く人がどんどんいなくなり、最終的には経済が立ち行かなくなって滅んでしまいました。
マルクスが提唱した共産主義は「資本主義の後」に来る社会
もっとも、マルクスが提唱した本来の共産主義は「資本主義が成熟しきった後の社会」であることには注意が必要です。
つまり、社会にはものがあふれかえっていて、好きなだけ食べ物があるし、必要なサービスは機械が全部自動的に作ってくれるような社会です。
こうした社会がもし実現したとしたら、そもそも人間には「働く」という行為そのものが必要ありません。
共産主義のもとで、みんな平等に楽しく遊びながら暮らそうというわけです。
こういう理想的な状況がもし実現するのであれば、共産主義にも合理性があると言えるかもしれませんね。
社会主義=共産主義の途中経過
現在は「社会主義は共産主義の途中」という考え方が一般的になりました。
「完全なる究極の平等主義が共産主義で、そこに至るステップが社会主義」というわけですね。
いわば社会主義とは共産主義への途中経過ですから、当然この両者には共通点があります。
全ての人が平等な社会を目指すという終着点はどちらも変わりません。
より極端で完全なのが共産主義で、まろやかなのが社会主義となります。
私有財産制の撤廃・生産手段と財産の共有・平等な分配などは社会主義と共産主義で共通の理念となりますが、これらをどの程度徹底的に行うか?が違うというわけです。
社会主義国家の例

(旧ソ連=現在のロシアの赤の広場。ソ連は社会主義・共産主義を目指しましたが、結局うまくいかなくて滅んでしまいました)
社会主義国家は過去から現在にかけてたくさん存在してきましたが、もっとも規模の大きい社会主義国家はソ連です。
ソ連は1920年代から70年近く続いた社会主義国家でしたが、1990年台初頭に革命により倒れ、現在のロシアとなりました。
ソ連がなぜ崩壊してしまったのか?はよく議論される点ですが、もっともポピュラーな原因としてあげられるのが「労働者が働いても得をしない社会になってしまったから」というものです。
仕事をなまけても、優れた仕事をしても平等される富は平等なので、労働者が働く気を失くしてしまったのです。
怠けて仕事をして自分の仕事の足を引っ張っているやつと真面目にやってる自分が同じ給料だったら、真面目に働く気を失くしてしまいますよね。
そういった理由で生産力を失ってしまい社会がうまくいかなくなってしまったのです。
ちなみに他にもキューバなどの社会主義の国は少ないながらありますが、共産主義の国は現在のところひとつ存在していたことはありません。
まとめ
今回は、社会主義と共産主義の違いについて、できるだけ簡単にわかりやすく説明してみました。
ソ連の崩壊によって社会主義は「もう終わった考え方」と考える人が大半ですが、社会主義の考え方は「資本主義を補完するもの」として現在の日本でも採用されている部分があることを知っておきましょう。
社会主義の考え方を究極的に推し進めた共産主義については、日本共産党の人などを除いて、現在は支持する人はほとんどいなくなっているのが現実です。
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